第2章 新生活 〜new school life〜


朝が、やってきた。この日、藤井は緊張を抱き、学校へと向かった。まだ慣れない通学路を自転車でこいでいった。その目には、確かな希望が映ってた。いよいよ始まる、自分が選んだ高校での生活。それは、夢に近かった。長い坂を上り、付いた先はまるで夢の世界のようだった。校門をくぐる。迷わず、自分の教室へと向かった。

自分の教室は、南校舎4階の東から2番目にある。校舎は古く、ところどころで壁紙が破けていたり、天井に至っては雨漏りの後も多かった。昇降口を左にまがり、保健室、購買の前をとおり、南に折れる。そこは、一階の渡り廊下で、壁は無く、まるで中学校の体育館のピロティーみたいだった。そこをすぎると、窓がなくすこし薄暗い南校舎一階につく。向かって左側は、「情報技術科実習棟」と書いてある。おそらく、自分はここで3年間厄介になるのであろう。それは無視し、目の前の階段を4階まで上る。4階一番東側の教室は電気科1年生である。

自分の教室に入ると、もうクラスメイトは10人ほどいた。みんな、本を読んでいるかボーっとしていた。まだ入学式の次の日なので、友達がまだできてないのは当たり前だった。藤井も、出席番号順の席に座った。中学のときは、すぐに友達のところへ飛んでいけたのに。そう思っていた。やはり、初対面は緊張するものである。みんな、周りを伺いながら各々の時間を過ごしている。

時間とは早いもので、午前7:35のチャイムが鳴った。ふと周りをみてみると、クラスメイトは大方集まっていた。二人、空席があった。部屋の西側の扉があき、担任・河東邦夫が入ってきた。昨日の入学式とは違い、シャツに下はスーツの長ズボンという、一般的な格好をしていた。

「はい、全員起立。」

その声とともに、クラスメイトは一斉に立った。その後、あいさつをし、河東はクラスメイトを座らせた。ふと、河東は空席が二つあるのに気づいた。

「そこはだれだ・・・?山中は休みと聞いたけど・・・。」

すると、その空席の隣の一人の男子が答えた。

「伊東君です、先生。」

その男子は目立つほど背が高かった。他の生徒の目線は、そちらに集中した。すると、その男子が座り終わった瞬間、後ろの教室の扉が開いた。そこに居たのは、紛れも無く伊東健史だった。髪の毛が、不自然に立っている。

「どうしてこんなに遅いんだ?」

河東が尋ねると、伊東は静かな声でしゃべった。

「すいません・・・。」

これを聞き、中には笑いをこらえきれずに噴出す人も何人かいた。

「まったく。立って反省してなさい。次からはこのようなことが無いように。」

そのまま、朝のSHRが始まった。初めてとなる今回は、簡単な連絡事項で終わった。その間、伊東はずっとで立っていた。チャイムがなると、先生は出て行ったので、伊東はその場に着席した。

静かである。中学のときとは考えられなかった。こんなに静かなときなどあっただろうか。話しているといえども、同じ中学校同士で、せいぜい4,5人である。席は出席番号順になっており、綺麗に整列状態になっている。

言い忘れていたが、この学校は県内有数の完全給食を実施している。メニューとしては、日替わりのA,B定食、そして麺とカレーである。

この日は、普通に給食があった。みんな謙遜しあってか、歩いて食堂へ向かっていた。すでに、本校舎二階の廊下には長い列が三階の渡り廊下まで続いていた。上級生が、隣を歩いていく。この上級生も、一年のころはこうやって並んだのだろうか。藤井は、これでもかというくらい後ろに行かされ結局二階と三階を繋ぐ階段で待つことになってしまった。

人が多い。藤井は、それが嫌いだった。昔から、人がたくさん居るところには近づかなかった。しかし、これは宿命である。この高校に入ったからには、少なくとも一年間我慢しなくてはならない。そう考えると急に上級生がうらやましくなった。

時計が、十二時を指した。列が、まるで蛇のように動き出す。その蛇は、本校舎二階の廊下を通り過ぎ体育館への渡り廊下へと伸びていった。食堂は体育館の下にあり、そこに行くルートとしては本校舎二階の渡り廊下から体育館の入り口までいき、そこで90度に曲がって階段を下りる。これが、最短だった。よって、このルートが本命だといえる。そのうちに、その蛇は食堂へと侵入した。そして、蛇は頭から裂けた。生徒が、思い思いの給食を貰いに行ったからだ。そして、給食を貰った生徒はそれぞれ空いている席へつき、食べるのである。

藤井は、カレーを選んだ。特に理由はない。ただ、空いているからというだけである。そのカレーは、特別おいしいとも不味いともいえぬ、微妙な味だった。

その一日は、早く過ぎ去ってしまった。明日からは、とうとう普通授業が始まる。藤井は、自転車に乗りながらそう考えていた。風を切っていく。下り坂を下るのが気持ちよかった。まだ、自分はこの学校について詳しくは理解していない。これから理解する。そう、心に決めた涼しい春の一日だった。


第2章 END




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