第3章 様々な出会い



入学式から三日がたった。木曜日。もう、女子は仲良くし始めていた。それは、男子も例外ではない。そう思っていたのは、もう一人の主人公、佐藤昌直だった。この三日間、佐藤は藤井と同じように過ごしていた。朝は読書、休み時間は机に座りながらボーっとしているだけである。そんな生活に、先に終止符を打ったのは佐藤のほうだった。

三時限目の、社会。担当の先生は、少し髪の毛の薄いメガネをかけたサラリーマン、稗田透。授業が始まった。まず、最初の授業ということで簡単な教師の自己紹介から始まった。その後、稗田先生は皆にプリントをくばった。

「え〜とですね。今から、このプリントに春休み中に起こったニュースを書いてもらいます。それでは、隣同士で机をくっつけてください。」

その後、教室は机を動かす音でいっぱいになった。多少、話し声も聞こえた。みんなが机をくっつけ終わったところで、稗田先生は口を再び開いた。

「はじめてください。」

そういわれても、周りはまだ話したことの無い人ばかりである。ごく一部が話をしているだけで、ほとんどの生徒は黙りこくっていた。不意に、佐藤の隣の生徒が話しかけてきた。その少年は、背は中くらいで、顔が長く、声は低めだった。

「俺は左巻。よろしくな。」

佐藤は、緊張していた。こんなに緊張するのは、入試以来だった。

「ああ、よろしく。」

そして、その時間は左巻と話していた。

休み時間になると、左巻は廊下に行ってしまったので、佐藤はしばらく机に座っていた。すると、隣から興味深い話が耳にはいってきた。

「・・・この前さ、あの新作ゲームかったわけよ。それでさ、主人公がさ、これまた装備が弱すぎて敵に袋叩きにあって死んじまった。やられたねぇ。」

一方は、笑いながら返事をした。

「マジで?もっとましな装備無いのかよ?」

「ん〜、まだまだ先だね。」

「そこまで行くのに結構死なねぇ?」

「そこは、気力で頑張るさ。」

どうやら、新しく発売されたRPGの話らしい。偶然、佐藤もそのゲームを持っていた。隣の二人は、池野裕也と伊東健史だった。池野は背が低い小ぢんまりした少年だった。この少年こそ、そこらへんの小学校にいても不思議は無い。そして、佐藤はその話に首をつっこんでみた。

「あ、そのゲーム俺も持ってるよ。」

そういった瞬間、二人は一斉にこっちに向いた。そして、池野が先に口を開いた。

「それはめでたいねぇ。それで、今どこまで進んだ?」

そのまま会話は弾み、この日が終わるころにはもう伊東、池野、佐藤は親しい仲になっていた。友達の作り方とは、だいたいこんなものである。この日で、佐藤の友人関係は大きく前進した。

一方、藤井は夏木正章とちょくちょく話すようになった。夏木は、背が特別低く、坊主頭の少年だった。こちらも、そこらへんの小学校にいても不思議ではなかった。

次の日、朝のSHRで、担任から思わぬ言葉が出た。それは、予てから言っていたことでもあった。

「今日は、部活見学の日です。帰りのSHRが終わりしだい、各部活のところへ見学に行ってください。どこで部活をやっているかは、この紙に書いてあるので、ここに掲示しておきます。それでは、解散。」

終わった後、その掲示板に生徒が殺到したのはいうまでもない。この学校のもうひとつの魅力が、この工業高校ならではの部活である。この学校は、運動部、文化部に加え、生産部という分野の部活がある。その広大な土地に建設された工場棟や、校舎内に設けられた情報技術実習棟や、CADがインストールされたパソコンがある部屋(通称CAD室)などで活動している。どの部活も県内では優秀な成績を収めていた。その中でも、一番目立っているのが、「ロボット研究部」である。特に、二足歩行ロボットなどはたびたび新聞に載ったり、はたまたテレビにでたりと、全国的に有名だった。

そして、このクラスにもそんな業績に憧れ、ロボット研究部に志願するものがいた。佐藤と夏木である。佐藤は、予てから中学校時代からの塾友、黒羽奨太とこの部活に入ることを決めていた。夏木は、入学してからこの部活に憧れたらしい。

その日の放課後、早速佐藤、夏木はロボット研究部の部屋、「工学実習室」へと向かった。まだ、夏木も佐藤も、同じクラスということ以外はなにもお互いのことを知らなかった。先に到着したのは、夏木であった。場所は、南館2階。情報技術科実習棟に近かった。入り口まで来ると、いきなり、小太りでメガネをかけている二年生に話しかけられた。

「君、もしかして見学?」

夏木は、緊張しながらも、

「は、はい。そうですけど・・・。」

と答えた。すると、その小太りの先輩は、笑って、

「そうか。なら、入って。好きに見てって良いから。」

と言った。夏木は、先輩の後についていき室内を見学した。

広は、自分たちの教室と同じだった。部屋の南側は、窓になっていて、壁沿いに縦長の机があり、その上にパソコンが4,5台置かれていた。前の黒板には、ホワイトボードが掛かっていた。どうやら、出欠席をとるためのものらしい。それぞれ名前の書いてある磁石があった。北側には、棚があった。その棚の上には、これでもかといわんばかりに箱が積み上げられていた。西側には、機械類が置いてあった。部屋の中央には、これも同じ長机が三列並んでいた。中にはもう、3,4人の一年生が黒板の前できょろきょろしている。

そして、そのとき部屋に入ってきたのが佐藤である。ちょうど、この日は掃除当番だったらしい。佐藤は、部屋の中を見て、一年生が居るのを確認し、入った。さすがに、有名な部活だけあってみんな真剣に部活動をしていると思いきや、一部では笑いが飛び、後ろのほうでは三年生の先輩が寝転がっていた。どうやら、先生の姿は無い。どうなっているのか。本当に、この部活はかの有名なロボット研究部なのであろうか。いや、きっと何かの間違いだ。すると、入り口のドアがまた開いた。そこには、藤井の姿があった。藤井は入るとすぐに、夏木のほうへ向かい、なにやら話していた。

「藤井君、なんでここにきたの?」

「来ちゃ悪いか?」

「いや、悪くないけど、何でこの部活を見ようと思ったのか知りたいんだよ。」

「他にあまりいい部活がなくてな。ここなら、自分の実力を高めれると思ったんだよ。」

そして、結局先生は来ないまま、その日の部活見学の時間は過ぎてしまった。この部活を選択したことが、後に大きな影響を与えるとは、まだ誰も知りえなかった。



第3章 END




back   top   next
inserted by FC2 system