第4章 憧れの部活へ



部活見学週間が始まって、三日がたった。情報技術科1年の生徒は、聞いた限り、ほとんどの生徒が入部先を決めていた。隣の伊東、池野はともに情報部へ入部するらしい。

情報部とは、いわば情報技術科に用意された部活のようなもので、顧問は情報技術科1年副担任・堀田和己である。堀田は、メガネをかけており、髪の毛は薄く、性格は真面目かつユーモアにあふれており、人気の先生だった。おそらく、クラスの三分の一はこの部活に入るであろう。それほど、情報部はすごかった。

対してロボット研究部では、ほとんどが機械科の生徒であった。そして、佐藤、藤井、夏木はロボ研の部屋で毎日会いつつも、教室で話すことは無かった。しかし、佐藤は伊東・池野を通じ、情報部に入部するという生徒たちと仲良くなっていた。その中でも、特に仲のよくなったのが出席番号25番・仲間靖弘と、21番・坪見孝則、そして18番・橘直毅である。共通の特徴としては、全員メガネをかけている、というところだろう。朝は、いつもその5人(仲間、坪見、橘、伊東、池野、佐藤)で集まり話をしたり、はたまたトランプしたりする始末だった。

この日、授業が終わり、佐藤は再びロボ研の部屋へと顔を出していた。そこには、黒羽がいた。事前にメールで連絡を取り合っていたのだ。

「はやいなぁ、黒。」

佐藤は、黒羽のことを略して「黒」と呼ぶ。

「SHRが終わるのが早かったんだよ。」

いつものように、黒羽は颯爽と答えた。

「で、今日は先生に出しに行くんだろう?用紙を。」

「できればそうしたいねぇ。」

どうやら、二人は今日ロボ研の顧問に「用紙」を提出するらしい。用紙とは、部活に入部するための書類である。認められるためには、自分の名前と入りたい部活又はサークル名を書き、その部活又はサークルの顧問のサインが必要だった。そう、この二人は一番重要なサインをもらいに行くのである。もちろんもらえない、ということはないから(二人の中では)、ロボ研の部屋の向かい手にある機械科職員室へと向かった。

中は、普通の教室の4分の1程度という狭い部屋に、教師用の机8台がところ狭しと並べられていた。その窓際の一つに、その先生は座っていた。佐藤が先陣をきって、その先生に話しかけた。

「すいません、西園寺先生。」

どうやら、先生の名前も調べてあるらしい。西園寺とよばれた先生は、回転式椅子をゆっくりと90°回転させた。その顔は、メガネをかけており、ひきしまった形をしていた。まるで、大学出まもない好青年のようにみえた。

「なんですか?」

声にはそん特長は無かった。

「僕たち、ロボット研究部に入りたいんですけど・・・。」

そういって黒羽と佐藤は用紙を西園寺と呼ばれた先生に出した。しかし、西園寺は受け取ろうとはしなかった。

「君たち、この部活しっかりみた?君たちには、まだこの部活について知らないことが多いから、その点でまだ入部は認められないな。分からないことは先輩に聞けばいいし、いろいろ知る方法はあるだろう。それからでも、遅くは無いと思うよ。」

これはまったく予想外な反応だった。自分の部活に入部したい生徒がいるのに、その入部の書類すらも受け取らなかったのである。やはり、この部活は他のそれとは違う。そう思ったのは、これが始めてだった。

「わ、分かりました・・・。」

黒羽と佐藤は、そう言うと部屋を出て行った。すると、向かい側の席の背の低い中年の先生が口を開いた。

「私の場合はとりあえず入部は認めるけどなぁ。」

その言葉は、紛れも無く「考えを聞かせろ」という意味を暗示していた。

「いや、勝嶋先生。最近の子供たちは物事を考えなさすぎです。ろくに考えずに直感だけで行動する。だから失敗するんです。今の子たちもそうでした。もっと部活ならば部活のことを知らなきゃだめなんです。次に来るときは、あの子たちはもっと部活に詳しくなっているでしょうよ。」

その後、佐藤は黒羽と話していた。

「もっとこの部活を知ろだって・・・。どうする?」

「知るしかないでしょ。いろんなとことか見て。」

その後、二人は周りを傍観するだけだった。他の1年ははたして用紙を出して同じ事を言われたのか。それとも、こうなることを知っていたのか。それは定かではないが、その後一人も用紙をだそうとする者は居なかった。その日は、それで終わってしまった。

そして、とうとう部活見学最終日の金曜日。今日で、部活を最終決定するのである。黒羽と佐藤は、迷わず用紙を出しに行った。

「先生、お願いします。」

そういって、西園寺の前に用紙を出した。すると、西園寺はくるりと佐藤のほうへ振り向いた。

「ああ、君たちか。どう?すこしは部活のことわかったでしょ?」

「はい。」

「そうか。それはよかった。これからもウチの部活で頑張ってくださいね。」

そう言うと西園寺は笑顔で用紙にサインした。それを見て、黒羽と佐藤はホッと胸をなでおろした。そして、そのまま二人は計測室へと戻った。しかし、まだ今日は見学の日なので、実際に部活に参加するのは来週の月曜日に持ち越された。



第4章 END




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