第5章 部活の秘密



月日とは早いもので、もう月曜日がまわってきてしまった。この日、一年生は部活初参加である。この日、藤井、佐藤含めすべての一年生は新しい部活にむけて心を躍らしていた。そして、そのときはすぐにやってきた。

いつものように計測室前で伊東、池野、仲間、坪井、橘と別れ、佐藤だけ計測室に入った。今回は、一番乗りだった。遅れて、夏木、藤井が到着した。すぐに他の一年生も姿を見せそのすべてが集まったとき、顧問・西園寺龍彦は現れた。表情は、いたって真面目だった。

「青島、これで全部か?」

西園寺は、中央の長机の手前に座っている物静かそうなメガネをかけている少年に言った。すると、青島と呼ばれた少年はゆっくりとこちらを向いた。

「はい、そうです。」

ぼそっと、そういった。

「分かった。」

すると、西園寺はこちら側、一年生のほうを向きなおした。

「今からミーティング始めるから、メモ用紙でもなんでもいいから書けるものもっておいで。」

一斉に、一年生はそれぞれの荷物へと飛んでいった。そしてそれぞれノートをとりだして、中央の長机に戻ってきた。皆、緊張しきっていた。

「じゃあ、ミーティングを始めます。遅れましたが、この部活の顧問、西園寺龍彦です。よろしくお願いします。」

そう言うと西園寺は軽く頭を下げた。それにつられ、一年生も座ったまま軽く頭を下げた。

「まず、この部活ではポイントというものがあります。このポイントが−50点になったら退部してもらいます。」

この言葉を聞き、一年生は顔を見合わせた。部活初日に、「退部」という言葉を聞いてしまったのである。

「出席すると一点プラス、雑務なども一点プラスです。逆に、遅刻や服装の乱れ、私の言ったことができなかったりしたらそこからどんどん引いていきます。」

一年生は、この内容に息を呑みつつも書き続けた。そして、この部活の全貌が徐々に明らかになっていくのであった。服装を乱したら、100円罰金。遅刻の場合は遅れた分数+その場にいた人数分引かれる。賞や試験で好成績をとれば大幅プラス、逆にクラスで30位以下の部員はテスト一週間前は強制勉強。得点の低い順に掃除当番などだった。つまり、普段の生活を保ち、そこそこの成績をとり、遅刻などをしなければマイナスはないということだ。しかし、それを保つことの難しさはもう少し後で知ることとなる。

その後は、いろいろなロボットの説明を聞いた。ロボ研の代名詞、2足歩行ロボット。珍しい4足歩行ロボット。白線を検知し走るトレースロボット。被災地などで人命を救うであろう災害救助ロボット。いずれもできは素晴らしく、数々の大会で実績を残しているものばかりであった。

これには、誰もがあこがれた。いつかこんなロボットを自分の手で作れるようになりたい。そう思った。

この日の部活はこのミーティングで終わった。それでも、一年生には重要な時間であり、また憧れの時間でもあった。

一週間が経った。クラスでは、すでにグループができつつあった。しかし、まだ佐藤と藤井は話していない。二人は出会いは果たしたものの、親密になるのはもう少し先になる。

授業も、以前にもまして複雑になってきた。二人が属する科は主に進学者が多いため、授業のスピードが速く、なおかつ難しいのである。よって、校内では電気科と並び「エリート科」と呼ばれている。

それは、部活内でも同じことだった。その日の部活。いきなり、佐藤と黒羽は三年生、菘大志に呼ばれた。

「お前ら、二足手伝ってみないか?」

二人は顔を見合わせた。なにしろ、数々の大会で名をはせてきたロボットなのである。これは、やるしかない。

「あ、はい。」

二人は制御用のノートパソコンの隣に座らされている二足歩行ロボットのほうへ向かった。そのロボットは胴体こそサーボモーターが支配しているにもかかわらず、手作りのアルミのパーツが全体をかっこよく見せていた。背中には大型のCPUを背負っており、そこから伸びるコードがパソコンへと接続されていた。

「今からこいつの説明をする。ノートが必要ならもってこい。」

二人は直にノートを持ってきた。その目は輝いていた。

「じゃあ、始めるぞ。」

菘はそういうと、二足歩行ロボットを持ち上げた。

「まずはこいつの紹介からだ。こいつの名前は『Hero』。重量は4kg。」

いそいでノートに書き留めた。そして、菘の説明は続いた。一通り説明が終わった後、菘が再び口を開いた。

「だいだいこれくらいかな。じゃあ、ちょっと手本見せるから見てろ。」

そう言うと、菘は机越しにレポートを書いている静かそうで背が高い2年生の肩をたたいた。

「おい、谷田部。やるぞ。」

青年はゆっくりと顔を上げた。

「やるんすか?」

「ああ。ちょっとこいつらに手本見せるだけだ。」

「分かりました。」

すると谷田部と呼ばれた青年は立ち上がり、部屋の隅にある普通の机を持ってきた。そして、それを長机の横に置いた。その机の上に、ロボットを乗せた。

「じゃあ、持ち上げて。」

菘が言った。谷田部はロボットを持ち上げた。ずいぶん重そうだった。菘がノートパソコンのEnterキーを押すと、ロボットはそれまでモーターのつなぎ目でぶらぶらしていた手足がまっすぐになった。まるで、人間で言う『きをつけ』のようだった。

「じゃあ、歩行するからしっかり受け止めろよ。」

「分っかりました。」

そういうと、谷田部は机の両端に手を伸ばした。

「いくぞ。」

その声と同時に、ロボットは人間ほどではないものの、歩いた。3歩ほどあるき、前に倒れたところを谷田部が受け止めた。見ていた2人は、驚きを隠せなかった。

矢田部と菘は、ただ笑っているだけだった。



第5章 END




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