*****| 第3章 〜2度目の悪夢〜 |*****


「光陰矢のごとし」というように、時間はあっという間に過ぎていった。今日でちょうど、地震から一週間である。その日、亮の世界は更新された。父親の死。病院から、連絡があった。もう病院に入ったときから虫の息だったそうだが、なぜか父は五日間耐えた。そして、通夜、葬式をすませ、今ここに至る。あの地震以来、各メディアは地震のことについて報道していた。もちろん、亮の勤めている「新日新聞社」もその中の一つである。

 亮は、葬式以来、会社を休んでいた。もちろん、無断欠勤ではない。あの後輩思いの上司・能勢が気持ちを察してくれ、会社に報告してくれたらしい。亮は、家で悲しみにくれながらも、テレビを見ていた。
夜10時をまわったころだろうか。急に、画面が娯楽番組からニュースに切り替わった。亮は、不思議そうにテレビ画面を見つめた。そのリポーターは、かなり焦っているように見えた。
「今、新しい情報が入りました!さ、さきほど、つい先ほどですが、高知県沖で大きな揺れを観測!!マグニチュードは7以上。今現在、室戸市で震度7、春野町で震度6強という非常に大きい揺れが観測されました!住民のみなさま、津波に注意してください!」
信じられなかった。あの博士の言ったことが現実になってしまったのである。とっさに亮はテレビの電源を切り、家を飛び出した。向かう先は、谷田部博士の元である。車を走らせた。渋谷のスクランブル交差点では、深夜にもかかわらず、多くの人が今回の大地震のニュースを見ていた。口を手で押さえる人もあれば、信じられないという目つきの人もいた。
大学に着いた。研究室は、なぜか明かりがともっている。門も開いている。迷わず、入った。研究室に入ると、そこにはすでに谷田部博士がいた。
「待っていましたよ、伊戸田さん。あなたが来ることは分かっていました。」
「どういうことですか!?あなたの言ったことは当たってしまった・・・。なぜ分かったんだ・・・。」
「まずは、座ってください。話は、それからでも遅くはないでしょう。」
言うとおりに、伊戸田は座った。
「前、あなたがここに来たとき、私は『何か』が起きると言いましたね。」
「はい、そうです。」
「その『何か』はだいたいは明らかになってきました。」
「な、なんですか!?」
「それは・・・・『日本列島西部から東部にかけての巨大断層による連鎖地震』である可能性が高い。」
「巨大断層・・・?」
「そうです。その巨大断層は、普通の断層よりももっと深くにあり、まだ発見されていない断層です。深いが故に地表にもその筋は現れず、存在が確認されていないんです。」
すると、博士は立ち上がり、奥の黒板を持ってきた。そこには、日本列島が書いてあった。
「これを見てください。まず、一週間前の鹿児島県沖地震がここ。」
そう言うと博士は、チョークで鹿児島県沖に×マークをつけた。
「次が、本日起こった南海大地震。」
博士は、今度は高知県沖に×マークをつけた。
「これを結んでみます。」
博士は×と×を結び、そのまま延長させた。すると、その線は、近畿地方を横切り、遠州灘・駿河湾へ伸び、東京湾、そして太平洋へ出た。
「これが、予想される巨大断層です。大地震はすべてこの線上で起こります。よって、起こるとすれば次の地震は・・・。」
「近畿地方か・・・。」
「そうです。その後、震源は徐々に北上し、恐らくは東海大地震、かの関東大震災をも引き起こします。これにより太平洋側は壊滅、地形が大きく変わります。」
「食い止める方法は・・・・。」
「残念ながら今のところありません。」
このままでは日本が半壊状態になるのは時間の問題だ。しかし、人間は所詮自然の前には無力なのである。起こってからでしか対処ができない。
「わ、分かりました。それでは。」
そう言うと亮は研究室を去った。
「少し過激すぎましたかね、浦田君。」
「いいんですよ。あのほうが博士らしいです。」
「じゃあ、解決方法でも研究しますか。」
そのあと、長谷部と浦田は一晩中解決策を探した。また、亮は自宅で眠れぬ夜を過ごしていた。

 一方、桜木は昔からの旧友と渋谷で遊んでいた。
「いやー、やっぱり久しぶりに遊ぶのはいいね。疲れがとれるわ。」
「そーいえば、玲奈って記者やってるんでしょ?」
「そうよ。結構大変だけど、やりがいがあるわよ。」
「へぇー。じゃあ、いろんなこと知ってるんだよね?」
「まあね。でも、だいたいよ。」
隣の友人は歩きながら携帯電話を弄っていた。すると、まるで他人事のようにこういった。
「ねぇ、玲奈。今、見たんだけど、さっき地震があったみたいよ。」
「どこで?どうせ、大した事ないでしょ。つい最近、大きいのが起こったばかりだからね。」
「そうじゃないわ・・・。高知県で震度6強を超えたって・・・。」
この時、桜木の常識は打ち破られた。一週間でマグニチュード7クラスの大地震が2回も起こったのである。しかも、まったく別の所で。ありえなかった。すくなくとも、自分の人生の中では。言葉が、返せなかった。
「それ、本当?このごろ、本当に地震多いわね。」
「そうね。友達なんか、買いだめに走ったみたいよ。」
「それはあわてすぎよ。」
そんなことがあり、その長い一日は終わった。

 この地震から、すべて歯車がかみ合い、動き出す。この動きが、国家を揺るがすことになるとは、誰も思ってはいなかった。

第3章 2度目の悪夢 END


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